あるとぎね、しば木のげんごえもんねえ、となりむらまで、じょうのうおさめにいぐって出かけらんたってね。そうして、どんどん山の方へいくとねえ、

 「ほらー、えねかあー。」

 「あーっ、そっちへいった。そっちへいったー。」
って、おおぜの人、きつねば、わい、わいって、おっていたったってね。きつねはもう、おっかけらんて、はあ、はあ、はあ、って、苦しそうにして、にげてきたってね。

 げんごえもんは、あわれんなって、

 「おう、わあ、ぼわんてきたかや、よし、よし、おれかくまってやるすけ、このおれのはかまのすそへはえれ。」
って、きつねばかくして、ちゃあんと、立っておらんたってね。

 そこへ、むらの方から、りょうしがふたりして、
 「どこへえった。」
 「どこへえった。」
って、おってきたってね。そして、

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