岩見重太郎のたぬき退治

 むがし、あったってや。
 
 あるとごになあ、岩見重太郎ってう、おさむらいがおらんたってや。

 あるとぎ、関甲通ってなあ、しんしゅうの方へ、えごうって、里の方からあがってこらんたってや。

 そうして、上関田の村まできたらなあ、あっちねも、こっちねも、村のしょう、かたまって泣いていたってや。

 「へんだなあ、なあして、こんなね泣いてえるんだろう。」
って、聞いてみるとなあ、ひとりのとしょりが、

 「この村のしょうやさんのうちに、自羽の矢、立ってしまっ、たんですわねー。」

52