のくんの、待っていたってや。

 そのうちに、十一時すぎたすけなあ、「さあ、そろそろ出かけよう。」って、村じゅうの人、出てきたってや。

 重太郎は、むすめさんのきもんきて、ながもちん中へはいらんたってや。

 村のしょう、そのながもちかついんで、「よいしょ!よいしょ!。」って、お宮さんへ、はこんでいったってや。そして、ながもちば、そごへおぐと、みんな、さっと村へ、にげてきたってや。

 重太郎は、「さーて。」って、ながもちん中から、そっーと、ぬけ出らんたってや。そうしてなあ、酒だるの酒を半分ものんで、こんだ、さかなのうんまいとこ、みんなくって、待っていたってや。そんだけもなあ、なあにも、出てこねがったってや。そんだすけ、また、ながもちん中へはいらんたってや。

 そうしんと、急に、さあーっ、さあーって、やあな風吹いてきたってや。
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